『問題社員トラブル円満解決の実践的手法』感想。

 

 もくじ抜き全398ページ、読みました。面白かったので感想を書きます。

 

概要

 セクハラ・パワハラ・横領等を行う問題社員が居た場合に、いかにしてリスクの高い解雇を避けて、退職勧奨を成功させるか、という内容の本です。
 大阪の咲くやこの花法律事務所代表の西川先生が書いています。Youtubeもされていらっしゃる先生で、退職勧奨等のテーマでコンテンツ配信もされていらっしゃいます。本の購入を検討されている方は先にYoutubeのコンテンツを確認してもいいかもしれません。


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 章立てとしては、「なぜ解雇がダメなのか」を示した後、退職勧奨の基本の流れを解説しています。その後、能力不足の場合、パワハラの場合、横領の場合等、7つの類型を挙げて、実際の退職勧奨のフローを書いています。その他、非正規社員の場合の対応、労働組合対応等について触れ、最後にトラブルが起きる前に会社がしておくべく事前整備を教えてくれます。指導書や弁明書の例等の資料集もついています。
 

 

感想

 印象に残ったことを感想にします。

 

 まず、解雇のリスクについて。
 日本の場合は解雇は簡単にできない、解雇はリスクが高い、という何となくのイメージは元々持っていましたが、では実際に解雇を行ったとしてどれだけ困ったことになるのか、というのは理解できていませんでした。本書ではそこを最初に解説してくれます。
 結論、余程準備をして解雇をしたとしても訴訟になれば負けるときは負けるし、負けたら1~2年お金も手間も取られて訴訟対応をしたというのに何百万取られた挙句問題社員の復職を命じられるということで、たいへんリスクが高いんだなあと思いました。復職を命じられるというのがつらいですね。
 私は社労士事務所に勤めてまだ一年ぐらいしか経ってないですが、解雇の相談はちょいちょいあるなあという印象です。あるけど、相談段階ではとてもじゃないけど訴訟された場合の準備ができている状態ではないことがほとんどなので……そのまま解雇してしまうとまずいですよね。

 

 また、懲戒処分について。
 本書では、懲戒のプロセスを適切に踏むことの重要性が語られています。ですが、懲戒についての相談って少ないんですよね。結構ヒートアップして「もう解雇したい!」まで来てからようやく相談を受けることが多いイメージです。そこまで来てから今までの来歴を切々と語られて問題社員の存在を知る、みたいな。
 問題社員……かも? ぐらいの段階で相談してもらえると動き方が変わりますね。早期に何でも相談してもらえる関係性が大事だなあと思いました。

 

 最後に、労働者の保護について。
 本書のあとがきで、弁護士がこういったテーマで解説することについて、批判的な意見もあり、従業員の立場の人から辛辣なコメントをいただくこともあったと記載があります。
 ですが、本書で挙げられているのは、読めばわかりますが基本的に「解雇になっても仕方ないでしょ……」レベルの事案ばかりです。私はどちらかというとこのレベルの問題行動でも、解雇して訴訟になったら負けることがあるのかと衝撃を受けました。労働者めちゃくちゃ保護されています。従業員目線でタイトルだけ見ると「問題社員ってなんやねん(# ゚Д゚)」となるかもしれませんが、大丈夫です、解雇なるほどの案件ばっかりです。
 他の真面目に働いている社員を保護するためにも、問題社員トラブルの解決は企業が主体的に取り組むべきだなあと思います。

 

 最近社労士関連の本をたくさん買ったので、また読み終わったら順次感想を書いていきます。